コラム

一般眼科

角膜疾患

角膜疾患 角膜の厚さは中央部で約0.5mm、周辺部で約0.8mm、表面側から角膜上皮細胞、実質細胞、内皮細胞の三層に分けられます。

角膜上皮
上皮は角膜の最も外側にあたり、角膜を守るバリアとして働いています。また外気から直接酸素を取り入れ、血液が通っていない角膜の細胞に供給しています。また角膜上皮の上には涙液層があり、角膜上皮は涙液によっても栄養されています。
角膜上皮は細胞同士がしっかりと組み合わさっていて、異物の侵入をブロックしています。また上皮は大変敏感で、わずかに傷ついただけで激しく痛みます。上皮の細胞の増殖は皮膚などよりもずっと早く、傷ついた部分をすぐに修復することができます。

角膜実質

角膜の厚みの大部分を占めているのが角膜実質で、コラーゲンという線維で出来ており、その線維が不規則に並ぶ強膜と違い、角膜では規則正しく配列しているため光を通す透明性を得ています。病気やけがなどによってコラーゲン線維の配列が乱れると、その部分は不透明となります。

内皮細胞

角膜の一番内側が内皮細胞です。内皮は眼球内にある房水という栄養分を含む水を、角膜実質へ届けたり、反対に実質の不要な水を吸い出したりと、ポンプのように働いています。この働きが低下すると、実質が水分過剰になり、角膜はむくんで白濁してしまいます。(この状態を水疱性角膜症といいます。)
内皮細胞は上皮細胞と異なり、細胞分裂を行わないため、再生力がありません。内皮細胞の一部が失われた場合は周囲の細胞が大きくなってその穴埋めをしますが、数が減った分ポンプ機能は低下します。

角膜の病気

多くは、上皮にできた傷から起きてきます。コンタクトレンズの不適切な使用や目に入ったゴミ、逆さまつげ、目をこすりすぎてついた傷、光線による刺激などが原因としてあげられます。
上皮に傷がついても、上皮細胞は修復速度が速いため、ちゃんとケアをすれば短期間で治りますが、傷が治りきるまではバリア機能が低下していますので、細菌などに大変感染しやすい状態が続きます。
もしそれらに感染してしまうと、小さな傷でも急に悪化して経過が長引き、濁りをのこしてしまって視力が低下することがありますので、感染を起こす前に治療を受けることが大切です。

コンタクトレンズ障害

コンタクトレンズはきちんと使用していれば安全ですが、そうでないとさまざまな形の感染を引き起こす以外に、次のような問題も生じます。
角膜は血管がなく皮膚呼吸で酸素を取り入れていますので、コンタクトレンズの使いすぎは酸素不足の原因になります。生体はそんな状況を改善しようとして、本来角膜にはあってはならない血管が、周辺から伸びてきて透明な角膜に侵入してきます。この血管は一度できると消えることはなく、瞳孔の位置まで伸びると視力が低下します。
また、酸素不足により角膜内皮細胞が死んで細胞数が減少すると、角膜の新陳代謝が妨げられて障害が起こります。

細菌性角膜潰瘍

角膜や結膜の表面にはブドウ球菌などの何種類もの細菌が存在しています。上皮のバリアが壊れたときにそれらが入り込み、角膜内で増殖していきます。放置すると角膜が溶けて穿孔したり、眼球内に感染が広がり、やがて全眼球炎となって失明に至ります。

角膜真菌症

感染の頻度は低いですが、ステロイドの長期使用や何らかの理由で免疫力が低下した状態では感染しやすくなります。真菌は角膜内で胞子状になって身を守ろうとしますので、抗真菌薬を使用しても治るのに時間がかかります。

アメーバ角膜炎

広く土壌や淡水に生息する原生動物であるアカウントアメーバが、角膜に感染して起こる病気で、頻度はまれですが、感染すると治療に大変時間がかかります。
湖や川で泳いだり、ソフトコンタクトレンズを水道水で洗うなど不適切なケアをしていると感染します。

角膜ヘルペス

ヘルペスウイルスには成人の9割以上がすでに感染して、体の中に持っています。このウイルスは普段はおとなしくしていますが、疲れやストレスなどをきっかけに神経を伝わって角膜に現れ、活動し始めます。治療にはアシクロビルが有効ですが、再発もよく見られます。
症状としては、眼痛・なみだ目・充血が起こり、視力が落ちてきます。

再発性角膜上皮びらん

突然、角膜に傷(上皮びらん)ができて、いったん治った後、また再発をくり返す病気です。症状は特徴的で、突然朝に激しい眼痛と涙目になり、たいがいの場合、紙や爪による外傷の既往歴があります。
治療は抗生物質の点眼や眼軟膏を塗布したりします。この治療で治らない場合は、接着不良の角膜上皮を除去して、治療用ソフトコンタクトレンズを装用したりします。

水疱性角膜症

眼の手術やケガ、感染症などによって角膜内皮細胞が減少しポンプ機能が低下することから、実質に水が溜まり角膜がむくむ病気です。視力低下や霧視がおもな症状です。内皮細胞は再生しないので、症状次第で角膜移植を行い治療します。
内皮細胞が500個以下になると水疱性角膜症が起きてきます。白内障の手術の前には検査で内皮細胞数を確認し、数が少ない場合には手術出来ない場合もあります。

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